表題作を最初に読んだ。
この作者のお得意らしい曖昧な表現とよくわからないファンタジー設定が
日常の中に同居するお話。
SFホラー的な話を期待して読んだのだが、だいぶ違う方向だった。
他の人の書評を読むと、何やら深い構造や伏線があるらしいが、個人的に読み取れたのは
おっぱいの大きい女友達とお互い言い訳しながら友達ごっこをしていたけど、
結局女友達の婚約者が居ない間にセックスしました、という話だった。
ただそれをまわりくどく書いた感じ。
主人公はその浮気の事を
「やがて砂糖菓子のように崩れて跡形もなく消え去ることがわかっているまぼろしの中に、私はいっとき、私自身を投じた。」
と語っている。
なんともファンタジーだ。
逆に言えば、痴話も書きようで『文学』になるわけで、これはそういう痛さを楽しむ話なのだな、と納得した。
物語はよくわからないSF設定が説明されるかたわら、性的なメッセージが散りばめられていく。
主人公の家に一人で食事に訪れる女友達
女友達の「他人の家を訪問するには無頓着に過ぎる」服装
二人が好む濃厚な味覚
セクハラの話題
火あぶりとセックスの共通性
婚約者への敵意「私の取り分」
無造作に張り出したその豊かな胸
ベビーベッド
一人で住むには広すぎる家
帰宅時間を言い出さない
ありもしなかった凌辱の記憶
保護者のような気持ち
「独り者の男性がいつも使っているベッドでひと晩過ごしたら妊娠しそうなので」
…こんなのが延々続いて最後に合体。
結局SF設定いらないじゃん!このおっぱい星人!!
深読みするなら、恋愛というのは支離滅裂なSFと同じくらいファンタジーなんだよ、という
作者からのメッセージと解釈した。
わざと現実感の無いように作られたSFに、間接的に性的メッセージを混ぜる事で、
よくわからないけどなんかフェティッシュな文学だな、と
読者に感じさせる作りなのだなと思う。
表題作以外の中編も読んだが、だいたい構成は同じ。
どうでもいい話をぼかして書いて、扇情的な表現を散りばめるという作り。
何かが起こりそうな雰囲気を書き散らかしてあるくせに、結局何も起こらない。
「結局何だったの?」「で、結局何?」と言いたくなるような、打ち切り漫画のような話ばかり。
どの話も読み終わった後で「時間を無駄にした」と実感できるだけの怒りと脱力感を味わえる。
作風から察するに、支離滅裂なのも、投げっぱなしなのも、不快なメッセージに満ちているのも、
意味不明なのも狙ってやっている人のようだ。
こういう悪意ある書き方ばかりされる方のようなので、この人の著作は二度と読みたくない。
不快な読後感を求める方におすすめ。(結構います)