少なくとも「入門○○学」とタイトルを表している以上、読み手のスタンスを意識する必要があります。難解な問題を平易に解説するのがいわゆる「入門書」であるという認識に立てば、本書はその目的を達成できていません。著者に膨大な知識があったとしても、それを上手く伝えられなければ、地中の宝に過ぎません。わかる人だけが、わかればいいのさと言うスタンスこそが現代医療が不信を抱かれる根源であることを著者は理解しているのでしょうか?
学生時代、テクニカルタームだけをダラダラと解説して、実際の行動には殆ど役に立たないような十年一日の如くの退屈な授業がありましたが、それを思い出しました。私のレビューはいわゆる「酷評」と言って良いと思いますが、タイトルを見て内容にとても期待していただけに残念ですが仕方ありません。大量のレファレンス(参考文献リスト)がせめてもの救いでしょうか・・・
経済学のテクニカルタームをいちいち持ち出すまでも無いような事柄も敢えて、そうした記述がなされています。
例えば、p117-118
『旧来の医療の目標は、患者の利益の極大化、および医療提供者である医療機関の利益の極大化であった。そこに現在では医療費抑制のための予算制約が加わったといえよう。すなわち、今までは多くの無差別曲線上で医療行為が行われていたが、そこに予算制約が加わったために、行いうる医療がかなり限られてきた。これは、価値判断の転換を強いられているともいえよう。・・・』
高々、こんな事の説明にわざわざ「無差別曲線」の概念が必要なのでしょうか?全238ページの書籍のおよそ半ばである117ページにようやく、この記述であり、最初から、それを一体どうすべきかと思っている読者にとっては、いつまで「前置き」が続くんだよ!という感覚を持たれても仕方がないでしょう。引き続き我慢して最後まで読んでも、何ら新たな視点が展開されることはなく、どういう立場の人にとって有益な書籍なのか疑問です。少なくとも現場で臨床に従事している者にとっては分かり切ったことをわざわざ小難しく説明しただけの内容であり、読むだけ時間の無駄だと思われます。