本書については、すでに塚本恭章さんによる「経済理論の制度主義的展開」を軸とした素晴らしいレビューがあり、何も付け加える言葉はない。ただ、「制度経済学」は「様々な種類の理論が集まったひとつの分野」(日本語版への序文)であって、まだまだ発展途上の学問であることは間違いないところだろう。これからもこのフィールドに関する多くの挑戦と百家争鳴を期待したいし、「制度」の経済学に対する深化と進化を望みたい。
ところで、当書とスロウイン・エッゲルトソンの『
制度の経済学』そしてスィッツェ・ダウマ=ヘイン・スクルーダーの『
組織の経済学入門』を、これまた私は“制度派入門三部作”と命名したい。とりわけ、本書は「経済学における制度主義の系譜」を丹念に追い、たとえば、ドイツ新歴史学派のシュモラーやアメリカ制度学派のヴェブレン、ハミルトン、コモンズなど、今日では忘れ去れかねない先駆者達も歴史の舞台に引き上げている。
こうした先達の探求を、簡潔で要領を得た叙述で解説するとともに、フランスで1980年代から発展してきた「コンヴァンシオンの経済学」なども紹介しており、学説史としても一級品であろう。何より、過不足なく制度経済学の先学達をピックアップし、その理論的差異を比較した手法は、まさに“入門書”としてベストである。確かに、現代経済学のコアは新古典派的パラダイムにある訳だが、「制度」なくして経済学は語れない、と考える。