本書は確率論の基礎からランダムウォーク、ブラウン運動、伊藤過程とその応用としての数理ファイナンス理論といった多くの内容を比較的少ないページ数で無駄なく解説したものである。私は物理学科出身であるが近年この分野を学ぶ必要からこの分野の解説書を探していたところ出会ったのが本書であった。
この本のすばらしいところは全章にわたり、多くの例を交えたりしながら直感的に解りやすい説明を心がけているところである。そしてその例のチョイスが実に的確で本質を捉えているためこれらは初学者が理解をする助けになると思う。計算をするにしても、ただ公式に当てはめ計算して答えを出してわかった気にさせるのではなく、しっかりその計算の目的や結果の議論が易しく書かれているのは初学者にとって非常に心強いものである。
また、それでいて7章などに見られるようにある程度の数学的厳密さも保っており、ここでも初学者がつまずきやすい数学的な定理・定義の重要なポイント(どういう意味でなぜ重要か)を平易な日本語で解説してくれている。本書を読んで一見難しい数学の定理についても「あー、こういうことだったのか」と思えた読者も多いのではなかろうか。またよりアドバンスな内容や、本質から外れるような厳密な数学的証明などには、参考文献がしっかり引用してある点も好感が持てる。
(本の趣旨の問題上扱わないと断っていることは重要であるし、文献が引いてあるだけで安心できる!)
このような解説は著者が確率過程の本質を深く理解しているからこそできるものであり、ごまかしのない確率過程の入門書として是非薦めたい本である。