世界経済危機の余波がなかなか消えぬなか、その前後から新自由主義やその理論的基盤である主流派(新古典派)経済学の限界をあらためて声高に論じる学術書が多く刊行されている。過去を振り返ってみても、新たな思想や理論はいわば「危機の産物」ともいえるものであり、その意味でも新古典派に代替する経済理論の再生に積極的に尽力せねばならない。それはことにマルクス経済学について妥当する。政治経済学や社会経済学が実際のところどのような学問分野であり、またそれがいかなる可能性を秘めているのかという難題にまだ十二分な回答は提示されていない。ただその胎動は本書から感じ取れる。
ケネー、スミスそしてマルクスの伝統を継承する本書は、「再生産と制度の経済学」を軸とする展開構成を有し、「資本主義システムの基本構造」、「資本主義の制度的基礎」、「グローバル化と現代資本主義の変容」の三部から成る。どの部にも「資本主義」という言葉が挿入されていることを鑑みても、政治経済学という学問が「資本主義経済の学」であることは確かだろう。第一部の「基本構造」は実質的には「基本原理」とよべる内容であり、必ずしも(経済学の)基礎理論を網羅的に概説しているわけではないが、主要部分を平易に、しかも読み応えある論述に仕上げている。現代的な事例と理論との連関を重視するスタンスは全章を貫いており、広く政治経済学に関心をもつ者への配慮が行き届いているのではないか。著者らの心意気が伝わってくる。
本書の内容を深く理解するためには常に序章にある「政治経済学とは何か―その意味とねらい」に立ち返る必要があろう。万人に開かれた「経世家の学問」としての政治経済学は専門的な研究者だけに閉じられた狭き学問分野ではないはずだ。個々人なりの「多様な読み方」が可能な奥深い入門書であり、次へのステップアップのためにも是非とも推奨しておきたい。「あとがき」も示唆に富む。