入れ歯にはなぜか滑稽(こっけい)さがつきまとう。ほかの人工臓器が外れたからといって吹き出す人はいまいが、コントなどでは入れ歯がズレただけで笑いが起きる。老いれば誰もが体験する不具合だからこそ笑えるのだろう。だが200年以上も前の入れ歯となれば笑いの質も変わってくる。
総入れ歯はその誕生当初、容貌を保つための「詰め物」にすぎず、まだ「噛む」機能は持ち合わせていなかった。バネの力で入れ歯を上顎と下顎に押しつけて固定するという乱暴な作りで、歯肉は傷つけられるし、上唇は押し上げられ、油断すると入れ歯が飛び出してしまうので、使用者は歯を食いしばり続けなければならなかった。装身具というより拷問具とよべるような代物だったのである。
抜歯も19世紀までは麻酔無し。ペンチや釘抜きのような道具を使ったそのエピソード「患者の悲鳴をドラムやラッパの音でかき消した」などは、笑いを呼ぶかもしれないが、おぞましい、ザラっとした後味が残るだろう。その意味で本書は、「21世紀の歯医者嫌い」には、やや刺激が強すぎるかもしれない。(中山来太郎)
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最も参考になったカスタマーレビュー
1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
業界の人達にこそ,
By dental-t (北海道) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 入れ歯の文化史―最古の「人工臓器」 (文春新書) (新書)
簡単な歯科の歴史書として読んで面白い本です。歯科医学は若い学問なので歴史というとらえ方はあまりされていません、しかし最近のように歯科医学の進歩が早くなりますと、臨床家として、その技術や材料が本当に患者さんの利益になるかという事を批判的に判断する必要が生じてきます。その時歴史的視点が必要なんだと思います。もちろんこの本だけでは不充分ですが、ただの雑学を得る本としてではなく、自分の歯科医師としての幅を広げるきっかけとして、役に立つと思います
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