生命科学の現在がどのような状況にあり、どのような問題と可能性を秘めているのか、何の知識もないまま本著を手にすることができたのは幸運だった。まず、免疫学の巨人としてのみならず、人間社会の複雑な機構をも自在に論じるこの著者の学問のスケールに驚嘆する。
著者が他界されたと報じられたとき、とりわけ免疫学の「寛容」という概念で人間社会や国際関係のあり方、そのシステムを説く思想に引きつけられた。
本著は「自己」と「非自己」を識別し、「自己」を守り維持する免疫の基本的な仕組みからより高次の組織体である人間や、その社会システムにまで踏みこむ生命科学の現在を示唆するものである。
専門的な領域や聞きなれない用語もでてくるけれど、一般書としても充分楽しく読むことができた。