その道の第一人者が書いた、免疫というスーパーシステムについての解説書。
…こう書くと、いかにも専門的な医学関連書のようですが、そうでなく、この本のメッセージはむしろ哲学的でさえあります。
自己と非自己を識別するのは、脳ではなく免疫系である。これが、本書の第1メッセージです。
ニワトリにウズラの脳を移植しキメラは生後しばらく経つと、ニワトリの免疫系がウズラ由来の神経細胞を「非自己」の異物と判断し、排除を行い死に至る…。これはニワトリの免疫系が、ウズラ由来の神経細胞を「非自己」の異物として認め、拒絶するためである。
精神的「自己」を支配している脳が、もう一つの「自己」を規定する免疫系により、排除されてしまうのです。(第1章)
また、著者は更に免疫の自己・非自己認識メカニズムについて鋭く深い考察を提示しています。
臓器移植の際に問題になるのが、免疫系による拒絶反応です。この反応は基本的に「自己」以外の全てに起こりうるのですが、では、自己はどう認識されるのか?
免疫系の胸腺からサプライされるT細胞がその主役であり「非自己」を排除する役割を担う。しかし、T細胞は直接には「非自己」を発見し、反応することはできない。例えば血液中に異物が混入するとHLA抗原を揃えた細胞マクロファージにまず取り込まれ、異物にはHLAが結びつく。何も結合していないHLA抗原だったら、「自己」と認めて無関心なT細胞が、異物の断片と結合したHLA分子を見つけると、即座に反応を開始する。=自己のマークであったHLAが、異物により「非自己」化したのを認識し、排除する。
つまり、あくまで「自己」という文脈の中でしか「非自己」を識別できないのです。(第2章)
「自己とは何か?」
人々は、古今東西、このシンプルな問を考え続けてきました。
自己と非自己(他者)はどう違うのか。自己は非自己をどう認識するのか。自己は自分でないものを受け入れられるのか。
この本は、それに対して一つの視座を提供しています。ある意味容赦ない気がしなくもないですが……奥が深いです。
一押しです!!