著者である鈴木潔氏は、エミール・ガレの作品を数多く所蔵している北澤美術館の学芸課長ですので、実際ガレの作品をつぶさに鑑賞し、研究してきた方です。
ガレの作品の愛好家は日本でも多く、独特の文様とフォルム、色使いと技術、花鳥風月と浮世絵など、フランス人でありながら東洋芸術への親近性を感じるからこそ愛されてきたのだと思っています。本書でもガレをアール・ヌーヴォー(フランス語で「新しい芸術」の意味)のガラス工芸家と規定していますし、晩年の作品になればより顕著にその個性の輝きを増していきます。
葛飾北斎の浮世絵との出会いもまたガレの作風の確立につながっています。掲載されている2つの「鯉文花器」は独特の風合いを感じさせるものです。筆者の紹介にあるように『北斎漫画 十三編』の「魚濫観世音図」によっており、華やかで特異な図柄とガラス花器の組み合わせが今見ても斬新ですから、19世紀後半のヨーロッパでは驚きをもって受け入れられたことでしょう。梅に鶯、松に鷹のような図柄の作品も珍しく、日本画と西洋のガラス工芸の融合という出会いの魅力を理解しました。
また、本書で「ひとよ茸ランプ」と白血病を発症したガレの気持ちとの関係を知ったことは収穫でした。自然の形態における成長過程の中に、生と死の輪廻の思いがモティーフに込められていたわけですね。
諏訪にある北澤美術館は過去に2回訪れていますし、催されるガラス工芸の作品展を鑑賞していますが、これだけ多くのガレの作品をハンディで廉価な書籍で鑑賞できるのは僥倖です。いながらにしてガレの美しさに触れられるわけですから。