フルアルバムとしては前作「はなよりほかに」以来、実に2年。
しかし、ワーナー移籍後発売されたミニアルバム「and...Life」からは、半年に満たない短いスパンで発売となった本作ですが、ミニアルバムからの遜色はおろか、デビュー10周年という節目を迎え、熊木杏里というアーティストの底力を存分に感じられる作品となっています。
昨今の音楽シーンは本当に目まぐるしく、私には理解しがたい音楽も実際には数多くあります。
しかし私がここ数年、熊木杏里というアーティストの音楽を欲している理由は、彼女の作品に表される「肯定感」にあるのだと感じています。
彼女自身は、アーティストという立場の上ではメッセージの送り手であるといえます。
しかし、そのメッセージは、聞き手へのただ一方的なものではなく、彼女自身の向き合ってきた様が描かれ、そこに共感する私たち受け手が、"私は変わらなくていい、私のままでいいんだ"という彼女の「肯定感」に強く惹かれるからこそ、彼女の紡ぎ出す音楽を私は欲しているのだと感じています。
これは少なからず、彼女の音楽に魅力を感じる方には通ずる思いだと思います。
現在の彼女からは「新しい私になって」から「私は私をあとにして」までの頃のような勢いに似たものを感じられますが、当時はその変化に彼女自身が戸惑いを隠しきれない様子も窺えました。
しかし現在は10年選手となり、彼女の意志にブレは感じられません。
まさに本作は「肯定讃歌」。
決して前向きな言葉ばかりが綴られているわけではなく、時には儚さすら感じるその歌声からは、なぜか温かな思いや希望の光さえもを感じさせてくれるのです。
本作の主プロデューサーである武部聡志氏との相性も本当に良く、個人的には「羽」「心のままに」という名曲に出会えたことが本作での大きな収穫だと感じています。
バンドサウンドでは、歌声に若干の力みを感じられる部分もありますが、シンプルなアコースティックサウンドでは彼女の最大の魅力である"清澄さ"も惜しみなく引き出されていると感じます。
そして、最後には素直に"熊木杏里の音楽を聴き続けてきてよかった" と心の底から感じられる一枚であると感じました。
ぜひとも、再生ボタンを押したあとには、じっっと最後まで聴き通して頂きたい作品です。
「光の通り道」とは、彼女のこれまでの軌跡とこれからも描かれるであろう道に輝く、彼女の揺るぎない"意志"なのではないかと私は感じました。
ちなみに初回特典では、とあるカフェでのアコースティックライブの映像が収録されています。
彼女の真骨頂であるアコースティックの良さとライブ独特の空気感が伝わり、特典としては6曲・30分弱の収録内容で手頃だと思うのですが…、映像面はホームビデオで撮ったような低予算感の否めないようなものでした。
せっかくCDが素晴らしいものなので、この部分はもう少しなんとかならなかったのかな…と感じてしまいました(苦笑)
そういう意味では、初回限定版にこだわる必要はないかも知れません(笑)
あと本当に個人的な感想ですが、ワーナーに移籍してから、ジャケ写の写真映りが格段に良くなったなと思います(笑)