本書はこのユニークな教会堂がどのようにして構想され、設計、施工されたかを丹念にたどったノンフィクションだ。大学院で建築構造学を学び、構造設計事務所で実務を経験した著者の筆により、読者は建築の現場で何が行われているのかを実感することができる。コンクリートの軟らかさが少し違うだけで、どれだけ工程に影響するのか。なぜ建築家はその違いにこだわるのかといったことが、誰にもわかりやすく語られる。また、安藤のラフなアイデアがスタッフの手によって設計図にまとめられ、それを施工業者が工事現場で実際につくっていく過程が臨場感たっぷりに描かれる。
とはいえ、本書が建築の技術面に偏っているかといえばそうではない。1つの建物ができあがるまでには、何人もの人々がさまざまな立場からかかわるのであり、そこには人間くさいドラマが生まれる。安藤と彼のスタッフ、牧師と主だった教会員からなる建築委員会、そして施工業者が互いにどのような会話を交わし、何を考えていたかについての著述も十分な量を与えられている。ストレートにものを言い、次々に大胆なアイデアを発想する安藤という魅力的な人物なしにこの本は考えられないが、周囲の人物もそれぞれ重要な役割を演じている。第32回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。(松本泰樹)
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7 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
安藤建築ファンならやまずに語れない!,
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レビュー対象商品: 光の教会―安藤忠雄の現場 (単行本)
もしあなたが安藤ファンであるなら、この本を読まずして、安藤建築については語れないのでは?と思えるほど、あの安藤氏の肉声が伝わってくる本です。それだけでなく、安藤建築を支えているさまざまな人の姿、葛藤、それぞれの作品がつくりあげられていく(これは安藤氏やスタッフだけでなく、クライアント、また、実際に手がける工務店などとのまさに協働作業)が伝わってくるものです。
5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
安藤忠雄のすごさとやさしさ,
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レビュー対象商品: 光の教会―安藤忠雄の現場 (単行本)
この本のよいところは、筆者が安藤忠雄ばかりではなく、工務店、施主の側にもたったレポートをしているところである。建築家に頼むと言うことはどういうことかが、よく分かる。本の中に安藤忠雄と切り結ぶという表現が出てくる。これは、小住宅を造る場合でも同様である。工務店に頼むのとは全く違う体験である。いわば、建築家の美意識、工務店の施工の現実、何ができるか普通理解できない施主との思想、人生体験との戦いが起きるのである。更に、竣工後も建築家の思想が徐々に住み手、使い手に染み込んでくる課程も楽しむくらいでないと、やっていけない。その点、安藤忠雄は正しい考えを、まっとうに主張してくる人であることが分かる。教会建築の肝要な点は、欧州での修道院、教会建築から学んだことを、実現することで、そのために全力をかけて施主を説得している。面白いことに、使っているうちに、安藤忠雄の建物はどうしようもないと思っていた人々が、けっこうよいものだと思い始めるのも、彼の正しさを証明している。しかし、冬でも暖房なし、雨風雪が入ってきてもよい(実際にはガラス窓をはめたが)という思想は、教会という建物の原点を追求していて、それを現在の日本で主張できる人というのは、すごいことだ。世界の安藤になれたのは、その姿勢であろう。 しかし、自己主張と同じくらい、施主や工務店への思いやりにあふれている人でもあることも分かった。植栽などを建物完成後に購入して寄付しているが、それで設計料がチャラになったという記述がある。(幸い、この建物で、安藤忠雄の名は更に上がったのだが) 読了後、その構造や、光の取り入れ方の図をみているうちに、ル・コルビュジエの後を継ぐのは彼かも知れないと思ってしまった。 気持ちのよい本であった。おすすめである。
5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
光と思いがあふれる現場の魅力,
レビュー対象商品: 光の教会―安藤忠雄の現場 (単行本)
コンクリートの壁に切り抜かれた十字架。装飾を極力排した礼拝堂の空間に差し込む十字の光。そこに集まった信者たちの思いと教会を建設した人たちの思いが重なり、交わり、時間が刻まれていく。この建物は多くの障害・困難を乗り越えて存在している。経済的な資金不足、技術面、それらを現場の知恵と思いの力で克服していく過程はこの本のクライマックスである。人はそれぞれの思いを抱えている。自分の思いに対しどこまで真摯に向き合い、あきらめずねばり強く実現していくか。ついつい忘れがちなこの気持ちを思い出させ、勇気を与えてくれるビタミン剤となりうる作品である。
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