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先生とわたし (新潮文庫)
 
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先生とわたし (新潮文庫) [文庫]

四方田 犬彦
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商品の説明

出版社 / 著者からの内容紹介

伝説の知性・由良君美が東大駒場で開いたゼミに参加した著者は、その学問への情熱に魅了される。そして厚い信任を得、やがて連載の代筆をするまでになる。至福の師弟関係はしかし、やがて悲劇の色彩を帯び始める……。「教育」という営み、そして「師弟」という人間関係の根源を十数年の時を経て検証する、恩師への思い溢れる評論。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

内容(「BOOK」データベースより)

幸福だった師弟関係は、なぜ悲劇に終ったのか?伝説の知性・由良君美が東大駒場で開いたゼミに参加した著者は、その学問への情熱に魅了される。そして厚い信任を得、やがて連載の代筆をするまでになる。至福の師弟関係はしかし、やがて悲劇の色彩を帯び始める…。「教育」という営み、そして「師弟」という人間関係の根源を十数年の時を経て検証する、恩師への思い溢れる評論。

登録情報

  • 文庫: 318ページ
  • 出版社: 新潮社 (2010/6/29)
  • ISBN-10: 4101343721
  • ISBN-13: 978-4101343723
  • 発売日: 2010/6/29
  • 商品の寸法: 15.4 x 10.6 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.7  レビューをすべて見る (19件のカスタマーレビュー)
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By モワノンプリュ VINE™ メンバー
形式:単行本
 エピローグの次のページに、「本作品は『新潮』二〇〇七年三月号に掲載された。その後、その内容および記述の一部について、由良氏の御遺族から事実誤認などの御指摘を頂いた」(p239)と付記。「御指摘を頂いた」事実だけが告げられて、それでどうしたのか書いてない。訂正済みなのか、「御指摘」は無視したのか。謝罪の言葉も反論の言葉もない。こんな但書って、あるのかしら?
 面白いか面白くないかと問われれば、構成がまさに映画的で、すご〜く読ませる。プロローグがいきなり由良君美の死で始まり、第1章では時間が20年ほどもパーンと遡って著者の東大入学、由良との出会い。その後、さまざまなエピソードで由良の人物像に陰翳を加えるが、「間奏曲」では由良から一旦離れて子弟関係一般について考察。第5章はこの子弟論を踏まえた一種の結論だが、第1章では弟子の立場にあった四方田が、ここでは師の立場に立っており、構造的には話が一巡する。で、エピローグは言わずと知れた……ま、誰でも予想はつくか(笑)。
 物語としては漱石『こころ』は誰でも連想するだろうけど、本書にも登場する林達夫に絡めれば庄司薫『白鳥の歌なんか聞こえない』とか、それから中上健次も忘れてはいけないんじゃないかと思う。
 しかし第5章で由良をウェルギリウスに擬えるのには、やっぱり「……?」な感じはある。「不肖の弟子は、そこで初めて師が、キリスト以前に生を享けた者であるがゆえに、天界に足を踏み入れることが許されぬ身であることに気付くのである」(p211)って、それ随分な言い方だよね。自分はダンテってことだし……
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形式:文庫
四方田犬彦氏が由良君美先生との師弟関係を軸に、先生とは、弟子とは、師弟関係とは何か、について繰り返し問いかける自伝的物語である。そして、師弟関係という上下関係に潜む陥穽について、「師とは過ちを犯しやすいものである」という警句を引用して語る文章は心に響いた。私は由良氏は全く知らなかったが著者のよませる文章に引きずられてどんどん頁を繰っていた。私と著者とほぼ同時代の空気を吸って生きている。いつの時代にも普遍的に存在する師弟関係という問題を自らの経験を基礎に総括したこの本は時間を置いて再読したくなるに違いない。
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形式:単行本
 由良君美の名を、私はかすかに記憶している。
 東大の駒場キャンパスで、1979年4月から'82年3月まで、私は理系の教養課程を履修していた。当時の履修教科の英文系のカリキュラムを担当する一教諭として、また駒場で使われた英語のテキストの監修者として、その名があったことを憶えている。しかし、実際に授業を受けた記憶は無い。
 本書にも記されているように、'79年3月に父哲次が亡くなり、葬儀やら遺品などの整理に忙殺されていた時期と重なるし、恐らくそのペダンチックな授業は、理系の基礎学力としての英語力の修得が目的の授業には相応しくなかったこともあるだろう。また、人気が高かった由良氏の講座は、望んでも受講は適わなかったかもしれない。
 確かに、講座による人気の差はかなりあり、数人しか聴講生の居ないものもあれば、大講堂でマイクを使っての講義となるものまであったことを思い出す。私は、小津次郎氏のシェイクスピア講読の講座を履修し、少人数で『ジュリアス・シーザー』を輪読した。また、本書にも登場するルイス・キャロル学者として有名な高橋康也氏の授業を受けた記憶もある。
 そんな訳で、私はあの駒場を舞台に、本書にあるような人間臭いドラマがその裏で進行していたことに驚かされた。
 由良と四方田、二人の師弟の悲劇的な関係の顛末の詳細は本書に譲るとして、私が思ったのは芥川龍之介の「後生恐るべし」という言葉だ。
 由良の乱心は、端からこれに思い至らなかったことに尽きるのではないだろうか?優秀な弟子は、当然師を追い越してゆく。もちろんそこに、一抹の寂しさや嫉妬心を抱くのは無理もないことだが、それは教師の宿命でもある。それが嫌なら、初めから学生に自らの手のうちを明かすような立場に身を置くべきではない。在野で一人、研究に勤しむべきだ。由良にはそれを可能とするだけの経済的な基盤があったことは、本書でも明らかだ。むしろ、自分の元から巣立って大きく育ち、里帰りする弟子たちを誇るべきではないだろうか?
 そういう意味では、本書ではあからさまにそう記されてはいないが、由良は狭量でとてもチャイルディッシュに思われる(また、私は由良君美の業績が如何なるものか知らないが、小林秀雄や江藤淳を批判するからには、自らは明治開明期の知識人とは異なり、単なる西洋の最新流行思想の紹介者以上の、創造的な活動をしているという自負があったのだろう。が、寡聞にして私は由良氏のその筋での評判はとんと耳にしたことが無い。本書で描かれた同氏の姿から推察する限り、申し訳ないが彼の仕事は、横のものを縦にするだけの作業だったのではないか?と思えて来る。若き日のジョージ・スタイナーやサイードを発見して、その素質をいち早く見抜いたその慧眼はよしとするも、所詮は同業者ではないか。彼らが偶々外人だったから、紹介者としての面目は立つだろうが、それだけでずっと口を糊して行けると思ったらそれは甘い)。
 この辺り、相当虚栄心の強い人だったのではないか、と想像される。しかし、断定は控えよう。それこそ、芥川の『藪の中』ではないが、別の角度から見た場合、その登場人物たちの風貌は、がらりと変わる可能性があるからだ。
 もう一つ思ったのは、本書の終盤で言及された、由良の英語力に対する疑義である。私も驚いたが、英文学者であるにもかかわらず、一度も英米はおろか、海外渡航すらしていないという事実である。会社勤めの私ですら、海外へは幾度と無く出張し、英語では数限りなく恥を掻いてきたものだ。無論、四方田氏も言うように、研究と実用とは違うのかも知れないが、逆に言えば由良の最大の弱点はここにあったと言うべきではないだろうか。左翼活動家の急襲を毅然として「日本語で」撃退できる教授が、無神経なブロークンイングリッシュで畳み掛ける無知な学生を何故そんなに恐れなければいけないのか?
初めての訪米で、翌日に控えた「英語で」の講演に急に不安に襲われ国際電話で、泥酔しながら著者に無理難題を求めてきた由良の心奥には、講演でまともに「英語で」応対できなかったとしたら、それは弟子の四方田が自分に協力しなかったため、講演準備が不備となったことが原因であり、それに腹を立てつい深酒をして呂律が回らなくなってしまったためであると自分に言い聞かせるための予防線を張ろうと言う、それこそ由良お得意の the unconscious があったのではないか?
 そういえば駒場の授業で、当時著名な英文学者であり文芸評論家でもあった佐伯彰一氏が、授業を全て英語で通されたことがあったのを憶えている。また、かつて由良の母校である慶応義塾大学の鈴木孝夫教授が、英文科の教師がまともに英会話も出来ずに象牙の塔に閉じこもっている一方で、むしろ英語を専門としない理工系の連中の方が積極的に海外へ出て場数を踏む分、遥かに英会話に堪能だとうい話をされていたのを思い出す。
 要するに由良氏は、井の中の蛙だったと言うべきか。
 それししても、これだけの重い話を、丁寧に語り通し、最後は硬く閉じたわだかまりを晴れやかに解き放つ話の展開には感心した。哲次と君美、由良家2代に渉る近代学者の伝記としても大変に興味深く読める本だ。
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