一般に優れた小説は多様な読み方ができると聞きます.本書は正にそれに当てはまり、例えば60年代日本SFの傑作である「果てしなき流れの果に」「百億の昼と千億の夜」を野阿梓さん流に解体・再発明した本格SF小説であり、またホレイシォ・シャトオブリアンという一種の快男児が陰謀渦巻く中世ヨーロッパを駆け抜けるダークヒーローものでもあり、更に「ハムレット」で起きる連続殺人事件の謎解きミステリとしても読めます.著者のファンにとってはレモン・トロツキー・シリーズとの相似(ロス卿やジトン、赤い蟹(こちらがオリジナルか)が登場します)も楽しめます.個人的に好きなキャラクターとしては虚無な心に自由な魂を秘めたホレイシォの他、野性的なオフェーリアや、男の渋さ溢れるウォルター・ローリー卿が魅力的です.ご一読あれ!