ブッカー賞を受賞した「日の名残り」に続くカズオ・イシグロの第四作目の作品。
この小説はかなりシュールだ。
舞台はドイツ?オランダ?オーストリア?はっきりしない。とにかく読者に情景を思い起こさせない中欧の架空の都市。時間もなんか混乱している。いったい今読んでいる場面は朝なのか昼なのか夜なのか。地理的な位置関係もまったく想像できない。遠いところかと思っていると近い場所であったり。人間関係すら他人なのか家族なのかわからない。
しかし、決して駄作ではない。絵画や音楽にシュールなものが許されるのであれば、こんな小説もありかな。「何だこれは!」と思いながら、いつの間にかストーリーに引きずり込まれていき、先へ先へと読み進んでしまう。
読後感は?なんとも形容しがたい。ただ面白かった、というところか。ウィットに富んでいる。
かなりの長編だが、カズオ・イシグロの真髄を知りたければ是非一読を。ちなみに私は現代の作家の中でカズオ・イシグロが一番おもしろいと思う。