とにかく河原崎長十郎の演技と溝口の演出に魅せられました。とくに最後の場面の大石内蔵助、しびれました。打ちのめされました。
義士たちが皆切腹し終わって最後に残った大石が呼び出される、、そのときのさっぱりとした表情、軽い笑みを浮かべて、付き添いのお侍にかるく挨拶しながら立ち上がって前を見る目はすでに生を通り越している。、、、いちばんやりたかったことをやり遂げたという思い。たとえ命が終わるとも、いえ、終える事でさらに完全にやり遂げられる。そんな達成感、満足感、充実感が、静かに伝わってきてじ〜んとしてしまいました、こんな生き方があったのかと。
たしかに仇をうつとか内匠頭の思いを遂げることがそんなにやりたい事になるのかということは有りますけど、そんなことはどうでも良いとまで思えてしまう晴れ晴れとした達成感の嬉しさが理屈のはいりこむ隙間がないほどダイレクトに感じられます。
見終わった後、もう古本しかない真山青果の原作(脚本?)をネットで探して即注文でした。
で読んでみて驚くのは映画の上行くドキュメンタリータッチ。松の廊下の刃傷事件が周囲の人の証言から描かれていて、そのうえその人物の武家屋敷の地図、事件のあった時の江戸城の図面。その後も登場人物が本当に住んでいた所の地図が挿絵の代わりにふんだんに挟み込まれている。堀部安兵衛が、磯貝十郎左衛門がここで寝て、ご飯を食べてとどんどん想像が(妄想かも)膨らんでいくばかりでした。
で本も良かったのですが、やはり映像です。言葉は少なくても、人物の表情と仕草で一瞬にして伝わってきます。浅野家再興が出来ないと聞いて仇討に障害がなくなったと分った時の、もやがはれるようにすっきりした大石の表情とか〜
何にもとらわれない、迷いがない、最初から最後までまっすぐな「意思」、死ぬ事もほんの小さな事に思える。葉隠の武士道ってこんな感じなのでしょうか、なんだかすこし腑に落ちた感じです。それも溝口の映像の力でしょうね。
あと河原崎長十郎の色っぽさにも参ってしまったかもしれません、角帯を下腹に巻いた着物姿がなんとも粋で(お侍さんにしてはちょっと粋すぎるくらいに)、、、胴長短足ってこんなにすてきだったのね。