私も産経新聞の書評を見てこの小説をアマゾンで購入した一人だ。
あの辛口の産経が発売後一ヶ月も経たないうちに書評として発表したのは驚嘆に値するが、読み終えてその理由が判った。
安田善次郎は生涯事業家であり続け、晩年には有り余る資金を社会貢献に投じている。
小野ヨーコがジョンレノンと結ばれ、国際平和に貢献しているのは、曽祖父安田善次郎に負うところが大きい。
彼は事業化として成功したばかりか、安田講堂を寄付し、安田学園にも関係し、人材育成にも深く関与した人生を送った。
著者は、混沌と閉塞感の充満している先の読めない今の経済、政治、文化状況の中で、「読者はどのように生きるのですか?」と問いかけている。
それを考えるヒントとして、安田善次郎が大成するまでの一時期を集中的に取り上げ、成功要因、生き様を描き出している。
いつの時代にあっても大成する人間には共通点がある。時代を読み取る先見性と決断力、そして事をやり遂げる意思の強さと粘り強さ。人を感動させるだけの人間的魅力等々 含蓄のある内容は語録のようだ。
読み続けるうちに、価値ある人生を生き抜くとはこういうことだ!という著者の声が行間から聞こえ、失念している私にこれからの人生の指針と、事業に立ち向かう勇気を与えてくれた。
しかも、著者の明治から大正にかけての政治、経済、文化を完全に咀嚼した豊富な話題と推敲し尽くした秀逸な筆遣いは、小説としても読者を魅了してやまない。明治期の政治、経済、社会に対する知識も増え 何か得をしたような気分にさせてくれる。
素晴らしい小説を書き下ろしてくれた著者に感謝したい。次の作品が待ち遠しい。
鶴城子