本書はパリの高級アパルトマンの管理人ルネと
そこに住む裕福な家庭の12歳の少女パロマの二人
が交互に語っていくスタイルの小説。
ルネは豊かな教養を持ちながらそれを隠して典型的な管理人を演じている。
トルストイの「アンナ・カレーニナ」を愛読し、
小津安二郎監督の映画に心酔している。
一方パロマはブルジョワの大人達に幻滅し、自殺願望を抱いている。
谷口ジローの漫画に心酔し、漫画が原文で読めるようにと日本語を勉強している。
ある日そのアパルトマンへ金持ちの日本人、オヅ氏が引っ越して来たことによって、
二人の人生に大きな転機が訪れる・・
本書のストーリー自体は至ってシンプルで、
それよりも二人によって語られる上流階級の人々に対する辛辣な批判や
(フランスにおいて階級がまだ根強く残っている事にも驚いたが)
哲学、文学、芸術、日本文化などに関する蘊蓄が面白い。
小津監督の映画「宗方姉妹」についてルネが絶賛している所があり、
それに刺激されて私もツタヤで「宗方姉妹」のDVDを借りてしまった。
(高峰秀子の演技が秀逸です)
作品全体が知的な刺激に満ち溢れており、
フランスでベストセラーになったのも頷けるが、
果たして日本で売れるだろうか心配。