■作家・大崎善生の妻は棋士の高橋和。彼女は、幼少時の交通事故で足に切断寸前の大怪我を負い、十数回の手術を経た体験を持つ。
■二〇〇四年三月、彼女宛てに九歳の将棋ファン・杉田茂樹から手紙が届く。少年は彼女のファンで、サインを求めるものだった。彼は重い血液の病気で入院しており、このとき既に余命いくばくもない状態だった。茂樹少年は自分が死と隣り合わせにいるにも関わらず、手紙で彼女の足の具合を気遣う優しい心を持っていた。まるで天使のように。
■限られた時間の中で、文通が続く。病院訪問も考えるが、元気な姿で会いたいという少年の決意を尊重し、自粛した。
■そして五月末。茂樹少年から届いた手紙は、全身を襲う激痛と必死で戦いながら書かれたもので、字が大きく乱れていた――。奇跡を祈る大崎と妻。…やがて少年が天に召されたことを知らせる手紙が届く。過酷な状況でも優しい心を忘れなかった天使のような少年を追慕する表題作は、感涙必至のドキュメント小説だ。その他、人の生と死を静かに見つめる短編三作を収録。どれも大傑作。恥ずかしながら泣けてたまらなかった。