内容紹介
琴線を震わすアコーディオンの音色。アコーディオンの職人、ステファヌ・ドリック初のライヴ盤。 「この5本の平行線は決してお互いに触れ合うことはないから、休むことなくその線の上と線と線の間を通っていく音符とリズムを与えることによって結ぶつけてあげなければならない。私がいつもきみをそばにおいておきたいように ...」(ステファヌ・ドリック)
ステファヌ・ドリックは南仏の田舎ピアニストだった。(中略)最初のCDは92年の『水彩画』。93年にステファヌはロゼール県(オーヴェルニュ地方とラングドック地方の境界をなすフランスで最も人口の少ない県)に住み、土地のコンセルヴァトワールでディアト教師となる。97年、ケベック出身のヴァイオリニスト、フランソワ・ミショーらが参加した名盤『天使の一座』が録音され、このレパートリーから「生きる」、「エストレラ」、「マネット」などが欧州の多くのディアト奏者たちに取り上げられるスタンダード曲となった。2001年、CD『ひかえめな女』。
アルデッシュの山並みを背景に、画家のアトリエにも似た光と空気と色彩の環境にある音楽家の図であった。オーガニックに生きる風雅山人の図であった。そして4、5年に一度ほどの間隔で発表されるアルバムは、「ディアト」「フォーク/トラッド」という枠はあれど、パリ風アコーディオンの流麗なアルペジオのヴィルツオーゾとは無限の距離を隔てた、ディアト和音とアンサンブルハーモニーのひとつひとつに匠の心をこめた職人仕事の趣きがあった。
そして前作『ひかえめな女』の5年後の2006年5月、ロゼール県の人口121人の山村、サン・フルール・ド・メルコワールのアランテル劇場を使って、ドリックの初めてのライヴアルバム録音が行われた。仲間のミュージシャンを3人呼んで、クアルテットとしてこの劇場でコンサートを開いた。『天使の一座』以来のパートナーでヴァイオリン/ヴィオラ奏者のフランソワ・ミショー、『ひかえめな女』に参加していた女流ジャズ・クラリネット奏者カトリーヌ・ドローネー、そしてコントラバス奏者のナタナエル・マルヌーリ。標高千メートルの村の劇場で、天使の一座ドリック・クアルテットはダンス楽曲の演奏とは言え、その場の120人を踊らせるよりは、むしろじっくり聞き入らせたに違いない。スタジオ盤にはない起伏に富んだヴィヴィッドな仕上がりにドリックは満足し、ライヴCD化の作業を始めた。
発病は2007年だったらしい。白血病は手を尽くしても一向に好転せず、伴侶ドミニクに見守られながら、病床でドリックは新アルバムの作業を続けた。そして、たぶん、このアルバムがステファヌ・ドリックの白鳥の歌になるかもしれないバムタイトルは『優しい女』になり、冬の雨の中で傘を持つ女性の不安げな横顔がフロントカヴァー写真となった。この女性がドミニクであり『優しい女』なのだ。(向風三郎 解説より)
アーティストについて
<ミュージシャン> カトリーヌ・ドローネー:クラリネット フランソワ・ミショー:ヴァイオリン,ヴィオラ ナタナエル・マルヌーリ:コントラバス ステファヌ・ドリック:ディアトニック・アコーディオン