独特な芸術家であるこの人はどんな詩を書くのだろう、と開いてみたら、なかなか、の詩集であった。
「どうだ今日だけでも、シンデレラになれたか、/僕はガラスの王子様だ。」と「シンデレラ」という詩にある。シンデレラかガラスの王子様か、多分誰でもどちらかを心に持っている、あるいはもっていたいと思っているのではないだろうか。ガラスの王子様でなくてピーターパン、と言う人もあるだろうが、なにかガラスの王子様の方がぴったりくる気がする。どちらにせよ、心の奥にあるそんなピュアなものをくすぐり、ちょっとカタルシスまで感じさせてくれ詩集である。
切ないような、突っ張ったような男心の恋の歌がある。芸人である自分を主人公に、本音を吐露したような詩がある。子供の頃を思い出した自伝的な詩もある。どこまで本音なのか、創作しているのかわからないのだけれど、想像し、類推し、希望する著者像にはあっている気がする。意図してそんな詩が書けているのなら、その才能は凄いし、成功していると思う。ちょっと厚みのある、ガサガサした紙も、白地に文字だけの表紙も、書かれていることの正直さを現わしているかのようである。それすらも計算されてのことならば、それはそれでまた凄い。
実はこの本、向井敏「背たけにあわせて本を読む」に紹介されていた。自分では思いもかけない本を紹介してくれたこの「書評の本」にも感謝。