運動音痴の主人公・川入勝は、「ぼくは勉強ができない」(山田詠美)の
サッカー少年・時田秀美のネガのようです。
高校生ぐらいの子どもにとって、スポーツが下手なことがいかに
コンプレックスになるかがこれでもかと書かれています。
主人公から見た、スポーツができる人間独特の「いやな感じ」も
しっかり描かれます。
主人公がしょっちゅう自殺を考えているぐらいなのに、
小説の雰囲気は少しも陰惨ではありません。
本人は真剣に悩んでいるのですが、書き方がどこかひょうきんで、
読んでいてくすっと笑ってしまいます。
不思議に魅力的な一人称です。
ライトな「人間失格」のようでもあります。
自己嫌悪がはげしい勝が、本人に自覚がないまま
じつはけっこうモテている(女にも、男にも)ところとか。
しかし勝には「人間失格」主人公のべたっとした感じはありません。
情けないのだけれど憎めない。だいじょうぶ、
ガンバレ!と応援したい気持ちになります。
勝を取り巻く波多野さん(柔道部)、岡下さん(演劇部)、愛子(可愛い妹)、
米倉先生(音楽教師)ら女の子、女性が最高に魅力的です。
全編にちりばめられた、勝の友人・宇佐田君の詩が
(高校生にしては巧すぎる気もしますが)とてもいいアクセントになっています。