工藤選手が人に「教える」ということを分かっているな、と思ったのは「この本を読んで考えて、子どもたちの心の中にひとつでもいいから、そんな『引き出し』が増えてくれたら、本当にうれしいです」(p.5)。まず「読んで考えて」という言い方。単に読むんじゃなくて、考えながら読まなければ得るものは少ないということは前提になっている。そして、自分にあった修正方法をいくつ「引き出し」として持っているかが、選手としての財産なのだ、という納得的な考え方。工藤選手は立花コーチと一緒に、ニンゲンのカラダというのは、どういう風に動くメカニズムを持っているのか、ということを骨格や様々な筋肉の働きを考慮しつつ鍛えるみたいな科学的トレーニングを実践してきたが、そういった裏付けが「股関節をもつと意識しよう」によく現れている。
「両股関節と両肩の計四ヵ所の間接は、人間の数百個の間接の中で、それだけが臼(球)間接と呼ばれる特殊な形状になっています」と説得力が違う。股関節の可動域が狭いと、お尻は小さくなり、投げる際には重心が高く手投げになることが多い、という。「なぜ野球がつまらなくなるのか」もいい。子どもたちがなぜつまらなくなるかというと、それはうまく投げられないからだ、と。投げられないと捕ることもできないことが多い。そうなるとおもしろくなくなる、と。工藤選手は、小学生には絶対、大きなサイズのボールでは投げさせないようにしてほしい、と指導者たちに訴え、単に小学校六年生になったからC級からA級に一律に変えるのではなく、ひとりひとりの手の大きさにあったボールを使わせるべきだ、と力説する。