著者が「文化鳥類学」というユニークな分野の本を読んで一番思ったのは、「本当に好きなことやものについて書かれた文章は、美しく力がある、ということだ」。奥野信太郎の文章を評して「ほんの少し前まで、日本語はもっと木目の細かなものだった」と。本書に登場する本はジャンルも様々だが、一貫して格調ある文章にこだわって選ばれている。いわゆる名文家ということではなく、著者の生き方が選ぶ言葉や文章のリズムに表れるような文章を求めて、小説もエッセイも伝記も、音楽も映画も落語も歴史もSFも受け止める。『考えるヒット』の批評眼、文章力は、こういう読書遍歴からうまれたということだ。エッジの効いたミュージシャンが、古きよき日本語を愛し、その美徳の喪失を嘆く。驚くほど正統な書評集。