不思議な感じを与える昭和史だった。世の中はどんどん移り変わって行くのに立ち位置をほとんど変える事無く、同じ視点で俯瞰していく。それは、簡単そうで大変に困難な事だと思う。こんな事を可能ならしめたものは、筆者の従軍体験かもしれない。その体験記はそんなに詳しくは触れられないが、それがいかに大きいものだったのか読んでいくにつれて読者の私にも実感できる様になってきた。生き残った自分という視点から戦前・戦後を見つめる眼差しはどこか憂いと悲しみと、それでも生き続けているとも言うべき、ちょっとした後ろめたい喜びも混じって、やっぱり小説家だなあと感じさせる文章に仕上がっている。通史というよりも、やっぱり私小説の筆致に近いものを感じるし、その私小説風の個所の手馴れた感じがたまらなくいい。