私としては、この巻はビミョー。
振り返って考えるに、私がこの作者のマンガに感じてきた面白さって、第一にエヴァ世界にも通じるような思春期的な自意識の揺れ。『
小規模な失敗』なんかがソレでしょうね。そして第二に、周囲の人間たちに対する批評的な観察力。やはり一番身近な奥さんに対する観察っていうのが鋭くて、『
うちの妻』シリーズは楽しませていただきました。
で、このシリーズですが、最初は両方の魅力を兼ね備えているように感じられたのですが、まず前者が変質しましたね。意地悪く言えば、「僕の小規模な成功」をいかに維持するかという守りの姿勢から来る不安が色濃くなってきました。これは多くの人にとって共有しにくい感情ではないでしょうか。そして後者に関しても、奥さんや編集者についての観察に新味がなくなっています。先行レビューにも指摘されていた、双葉社の編集者に対するちょっと読み味の良くない悪口も、作者の観察がネタ切れになって来たための苦し紛れのような気がします。
もちろんお子さんの抱える障害(?)の問題や、夫婦の親たちとの関係など、今後も主題となりそうな要素はアレコレあるのですが、さてそれらを個人的な不安や悩みの吐露を超えた、作品としての水準に持っていけるかどうかは、ちょっと見えない感じ。
ただ、この巻に漂う(ように私には思える)停滞感に居座り、時代錯誤的かもしれない私マンガ家として独自の地位を築く、というのもアリかもしれません。