2005年上半期のマストバイ&ベストバイ。「批評」「評論」を今を生きる人の目線、立脚点、皮膚感覚、呼吸で語っている。彼の、これまでの硬質なテーマ設定になじめなかった人も、この書のリズムには乗ることができるのではないか。平明さ、ということを真っ正面からとらえて21世紀に踏み出した覚悟、潔さなどを感じた。「一階の視点を手放さないこと」での論考は秀逸。『ポッカリ空いた心の穴を少しずつ埋めてゆくんだ』(クレイン、2002年)から3年。そこでの「オンとオフ」で指摘していた、提案していた境地を、より自分のものとして消化吸収したレベルで今回論じることに成功している。
読後のすがすがしさは近年稀にみるものである。知り合いに連れて行かれたお寿司屋さんで、すっかり意気投合し、閉店後に出された普段は賄い用の「おむすび」を頬張り、お米の一粒一粒が口の中ではらりとほどけていく快感と、同時に、その店の寿司の旨さの一端を垣間見るとでもいおうか。ことば、から離れられない人は是非とも目を通すべき1冊。