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「戦う哲学者」として、何事にもずばずば切り込んでいく論調で知られる著者だが、本書の語り口はなだらか。「働きたくない」と37歳まで定職についていなかった自身の体験も踏まえ、それぞれの人物の「何をしたいかわからない」から「才能に自信がない」、「仕事におもしろみがない」といった問いかけのひとつひとつに丁寧にわかりやすく回答している。哲学者ならではの思想や思考の展開が、染みるように伝わってくる。
難を言うなら、著者自身の話も多く含まれるため、過去の著作や著者が開講している哲学の道場「無用塾」などの話も大きめに取り扱われており、鼻につく感がないでもない。だが、「はじめに」で著者も述べている。
「彼らとの談話は一種のモノローグのようなものであり、こうしたモノローグを通じて、私は私の分身にきわめて近い人々にメッセージを送りたいだけである」
著者自身が「仕事とはなんぞや」とぐるぐるした記録をすっきりまとめたもの。そう考えれば、共感できる部分もあるだろうし、読むだけで悩みも軽くなるかもしれない。(佐々木 陸)
人生においては、いくら努力しても他人の評価を得られるとは限らない。運や才能にはやはり個人差がある。その理不尽さに多くの人は悩む。しかし、著者は、一人閉じこもってしまうのではなく、実際に仕事をし、体ごと動かすことこそが自分の存在の意味を知る方法だと主張する。
(日経ビジネス 2001/3/19 Copyright©2000 ブックレビュー社.All rights reserved.)
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人事部員として、社員に「キャリアを考えよ」と大本営の言葉を伝え、その空虚さにぬるい笑いを漏らしつつ、自らも何をしたいのだと鬱々と考えながら過ごす日々の中、この本はたったの一晩で、確実に、丁寧に、易しく、「働くこと」の意味を教えてくれた。
プチひきこもりに今日で終止符を打つ。
働こうと思う。
たとえ、今している仕事そのものが私の天職なんかではないとしても、一生天職なんてものは見つからないのだとしても、私は生きているから。
自ら身体を使って働くことでしか得られないものがあるのだという、筆者の言葉に心の底から頷くことが、私はできた。
そして、考え、もがき苦しむことを止めてはいけないのだというそのことにも。
やれ、「自分探し」だ、「キャリアデザイン」だ、「ポジティブシンキング」だと、頭上を飛び交う私の目には眩しすぎる正論からは決して得られない、密やかで静かな「真」がこの本にはあると思う。
少なくとも、私には、一つの救いとなった本だ。同じ視線に立つ人がいることを知る安堵感とでも言おうか。
筆者にともかく感謝している。
私でも、働けるし、生きられる気がしたのだから。
人生を受け入れる事ができずに迷っている時「仕事とは何か」を通して「生きること」を判り易く解説している本だと感じた。また「仕事とは何か」をきっかけに哲学について知る為の入門書とも言える。 ただし、かなり容赦なく書かれているので人によっては嫌悪感や恐怖すら覚えるかも知れない。
しかし「働くことが嫌な人」だけでなく、迷っている時、嫌な事があって怒りが静まらない時、身も心も散らかっていてどこから片付けたら良いのか判らない時、突き飛ばす位に背中を押してくれる本である。
この本は哲学の本である。「問い」に対する「答え」があるわけではない。あるいは最後の章に至るとこの本は文学の雰囲気さえ醸しだす。しかし優れた文学作品は、読む人に価値観の転換を迫るものである。この本は残念ながらそこまでは至らなかったが、ある程度の心の揺さぶりは受けた。例えば「成功したり出世した人間はますます磨かれて人間的にも豊かになり成功するのに対して、いつか能力が開花するだろうと思っている人のほとんどは、つまり自分!は決して成功しない。」という指摘がある。おそらくその通りであり、その文だけでこの本の価値があったと私は思っている。