誰にでもちょっと魅力があるタイトルではないでしょうか。帯には「7割は休んでいて、1割は一生働かない」とあり、さらに「身につまされる最新生物学」。
主にアリの社会性行動の話なのですが、著者はいろんなことを人間社会に引き寄せて考えさせてくれました。といって「面白おかしい」書き方ではありません。平易ですが誠実で好感の持てる文章なので、結構真面目に考えさせられてしまいました。昆虫の行動の研究もかなりヒトの行動を説明できるところに来ていると感じます。
アリの場合、普段休んでいる「7割」も結果的には「いざと言うときに働く力になる」という形で集団が長く存続する力となると考えられる。その説明に使われている「反応閾値モデル」という言葉は、説明を読むととても納得できるものでした。例に使われているのは人間集団の掃除の話です。「掃除しなくちゃ」と思う程度(閾値)には人により差がある。普段は一番綺麗好きな(閾値が低い)人ばかりが掃除することになるが、その人がいなくなってしまう(例えば卒業してしまうとか)とその次に我慢できない人が始める・・・。これは、私自身の実体験にもとても符合しています。
でもこれ、その集団としては上手く機能するかもしれませんが、「割りを食う個体はいつも先に割りを食う」。働いている個体の立場からみたらちっとも「上手い」とはいえないですよね。とても身につまされます。
こういった身近な行動の中にも、ヒトにも昆虫にも共通する原理があるというのは、わかってみるとやっぱり感動でした。
そのほかにも様々な行動システムが、昆虫を中心に語られています。
集団で生きて行く事が有利だったから集団を維持する様々な行動システムが生まれてきた。しかし「メリットあればデメリットあり」。システムができると、うまく「ただ乗り」をするものが入り込む隙間も多くなる。実際のアリの社会にもある、というのは驚きです。人間社会の複雑化したシステムは、人間社会を広げたけれど「ただ乗り」も増やした、ということは考えれば思いつくことがたくさんあるところ。ほんとに「身につまされる」話です。