描写のリアルさと疾走する文体から、読み始めたら止められなくなり、一気に読まされた一書。どの編も読ませるが、個人的には、橋本真也と小川直也とのプロレス・ネタから入って競合店の店長からのスカウティングを謝絶した際の著者自らの胸中を描いた「彼は扉をノックしてくれたが。」が特に心に残った。
「本が好きで書店員になった。本が好きな気持ちはいまも変わらない。しかし本が本当に好きなら、書店員になるべきではなかったのかもしれない、と思い始めている」(6頁)。
「けれどもいま、本当の理由は「僕にはそれしかできないから」であることに愕然とし、でも心の底では、かなり以前からそれに気がついていたことも知っている」(164頁)。
「その気持ちさえ失うことがなければ、「書店員」というかたちでなくとも、これからも積極的に「本」と関わって生きていくことができる」(268頁)。
最初のうちは確かに愚痴を書き並べただけの一書とも見えましたが、筆者をして本書を一気に読ませたのは、著者の書物への愛惜と自らの職業へのプライド(誇り)に満ちたその真摯な生き様であるように思います。愛情転じて怒りとなす。それにしても、本屋はコンビニではない(136頁)というのに、著者のような店長さんが書店の現場から一人一人といなくなっていくというこの現実への抗議は誰に向ければよいのでしょうか。