いつの時代にあっても、誰が軍隊の主権者であるかという問題は、その国(当然ながら領邦などを含めて用いています)の安全保障のみならず、統治の根幹に直接関わる大きなインプリケーションを有しています。ギリシア・ローマにおける市民兵、中世の封建騎士軍、ルネッサンス期の外国傭兵、18世紀の強制徴募制常備軍、そしてフランス革命以降の国民軍という西洋における軍制の流れには、それぞれの時代における政治権力の限界と社会・経済の実相が反映されています。
本書は、そうした流れを前提に、西洋軍事史においてひときわ異彩を放つ「傭兵」に着目し、特にスイス傭兵やドイツのラインクネヒトの活躍と功罪を論じ、一般には知られることの少ない西洋史の一側面を鮮やかに描き出しています。政治や社会の歴史的な発展の中、近代傭兵の登場を促したものは何であったか、そしてまた、彼らの没落をもたらしたものは何であったか。単なる軍事史という視点を超えて、考えさせられることの多い一冊です。
著者はもともとオーストリア文学者ですが、ドイツ近代史に関する著作も多く、その独特の視点と平易な語り口は、少なからぬドイツ史ファンの注目するところとなっています。