表題作の「傍聞き」は、
第61回日本推理作家協会賞短編部門を
受賞した作品です。
この作品集には、
4つの短編が納められていますが、
いずれも小市民と呼べる人たちが主人公です。
「迷い箱」は更正保護施設の施設長、
「899」は消防士、
「傍聞き」は所轄の刑事、
「迷走」は救命救急士、というように。
そして、彼らの前に立ちはだかる事件は、
密室殺人や死体消失というような
派手なものではありません。
彼らが仕事上で巡り会った小さな謎が、
物語のラストに解き明かされるという
展開になっています。
いわゆる「日常の謎」と
呼ばれるものに近いと言えます。
作品は全体的に地味な感じです。
でも、それがマイナス要因になっているかと言えば、
そうではありません。
それは、いずれの作品も、
人情味豊かな人間の心理が
明かされるという展開になっているから。
派手さはないけど、
「人情噺」と言いたくなるような物語ばかりで、
読後感は爽やかです。
心温まる小説を読みたい人に、
是非読んでもらいたい作品集です。