舞台は、北条氏が実権を確実なものとした時宗の時代です。
物語には、二人の主要な宗教家が登場します。
沙依拉夢というタクマラカン砂漠から陸と海の絹の道を辿って日本にやってきた人物、それと同様に大陸からやってきて鎌倉政権にしっかりと食い込んだ蘭渓道隆禅師です。
これ以外にも、日蓮を初め、多くの当時の宗教家の名前が登場し、教義は同じでも、それぞれの考え方の違い、求めるものの違いが、明確にされてゆきます。
一方、三浦氏を全滅されて、時宗を敵と狙う三浦家村と、その家村に村全体を虐殺の嵐で失い、家村を仇と狙う百姓夫婦が登場します。
更には、この物語で大きな役目を果たす傀儡子の男女が登場します。
沙依拉夢は、「色」の中の「空」を、無我の境地を追求します。その一つとして、念仏や踊念仏に至りますが、それはあくまで手段でしかなく、そこから導き出される境地に彼の理想、真実を見ようとします。
でも、先の二組の仇討ちの事件に出会い、怒りとか恨みと言うものが、宗教では救い得ない限界にぶつかります。
それと同時に、傀儡子の歌声に「空」の境地を見出します。
宗教よりも、民衆は自ら、暮らしを「遊び」と捉える考え方で、宗教の目指す最高の境地にまで至っていることを実感してしまいます。
鎌倉時代の混乱した民衆の生活と、そこからくる宗教への救いを求める心、様々な宗教家の考え方も絡み、生きてゆくことの意義を考えさせられる一冊です。