遂に大群に取り込まれた地球の運命と反撃の好機を窺うテラナーの大掛かりな偽装作戦を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第276巻。本巻の執筆者は、ベテランと若手の感性激突フォルツとヴルチェクです。大群内部では人類の知性が甦り痴呆化からは解放されたが、防衛兵器バラトロン・バリアが機能を回復しない。バリア修理の時間を稼ぐべく人類の存亡を賭けた大偽装作戦が開幕します。
『偽装作戦発動!』ウィリアム・フォルツ著:ローダンの策略は地球の科学レベルを西暦2000年相当に見せかけるという大胆な作戦だった。本編の読み所は旧式スプリンガー船《アイクロム》でアトランを隊長とするコマンドが出撃して巧妙な手で偽神を騙そうと企む大芝居での危険に満ちた攻防戦の模様です。『戦場は地球』エルンスト・ヴルチェク著:地球では密かに地下都市インペリウム=アルファを大本営にして欺瞞に満ちた二次プランが着々と進行していた。本編では擬似戦争が演出され、地球がヨーロッパ大西洋同盟とアフロ・アジア帝国に二分されて核戦争に突入するのですが・・・・狂気に走った将軍が暴走するという思わぬ計算外のハプニングが起きてスリルでハラハラドキドキさせてくれます。
本巻の翻訳者、池田香代子氏のあとがきはニューヨーク、ペンタゴンへの同時多発テロ攻撃を受けたアメリカが、アフガニスタンへの攻撃を始めた状況について本書後半のエピソードと比較して論じられています。現実の戦争においてアメリカの参謀本部長が、誤爆に関して9.11の犠牲者に言及して正当化しようとしたコメントの醜悪さや無差別殺戮兵器の存在を例に、この現実はあまりにむごすぎるのだと慨嘆されています。本巻では喜劇の手法を借りて戦争に至る人間の闘争本能の恐ろしさを描いた久々にシュールな力作が読めて大いに満足しました。