戦争を軸とした、シリアスかつ骨太な英雄物語の最終章。
主人公ジャン・アバディーンが様々な試練、出会いや別れ、裏切りを体験し、
多くの葛藤を経て成長し遂に英雄の階へと至った今巻でしたが、
いくつかの理由で勿体無いというか、終わってしまったことが惜しい作品でした。
物語の大筋ではきちんと決着を着けており、「俺たちの戦いはこれからだ!」的な
打ち切り風味ではありません。
ただ、体裁的にちゃんと「結末」ではありますが、「完結」とは正直言えません。
それはフィナーレにおいて以下の瑕疵があり、即ち惜しむ理由なのですが…。
・恋愛面での決着が曖昧なまま。最後までティアナの「ヒロインとしての存在感」が
かなり空気のままでした。ライトノベルのお約束、とまでは言いませんが、
ボーイミーツガールで始まった物語の締め括りとしては腑に落ちない結末。
クーデレの「クー」をひたすら貫いたのは見事ですが、挿絵的な意味でも容姿設定の
優位がなければクリスの方がヒロインとして魅力があっただろうことはいただけない。
また、「人間と竜の恋愛はタブーだから」という伏線?の回収がされていないですし。
・本質としては戦記ものというよりは英雄物語よりなのだし、大戦を経て英雄となった
ジャンの活躍や名声を実感するシーンを増やして欲しかった。
もう1巻分書き足して、ジャンとティアナとクリスの三角関係を掘り下げて恋愛方面での
明確な決着を描いたり、戦争展開を少し水増しして、難しい背景や葛藤が絡まない、
英雄としてのジャンの胸のすくような活躍を描ければ、作品としての完成度、満足度は
高いものになったのでは、と思います。
ライトノベルとしては質実剛健、重い系な物語でしたが、濃密な内容だったことに満足しています。
終わり方がもう少し良ければ、という点を考慮して★4つとさせていただきます。