内田さんの「独演会」ではないか、という指摘には、たしかに肯定できる部分もあるのだけれど、やはり「対談」だと思う。身体が心地よい方に行動すればいいんすよ、と、ひたすらポジティブ・シンキングな饒舌ぶりを発揮しまくっている内田さんに対する、春日さんの口の重たい「ネガさ」がきわだって、その対照性がとてもおもしろく読めるからである。
春日さんは、基本的には内田さんに同意してはいるが、ところどころで「そうはいっても、私の場合は、このように違う」という話をしたり、これでは内田説は絶対に通用しないだろう、というような手ごわい患者さんの例をあげていたりして、話を聴いていると、そうそう、内田さんの言うほど現実は甘くはない、という気分にさせられる。とくに、最後にある春日さんのエッセイ、これが暗くて読むのが骨で、だから、いい。対談の要点をコンパクトにまとめている文章なのだが、それとともに、「常識」と紙一重のところに出現する「狂気」の深淵さを感じさせて、これが怖い。
対談の基調は「理想」を語ることであった。こちらも読んでて気が晴れる。でも、それは内田樹流のスタイルであって、そこに春日武彦風のリアルが加わると、本当の世界はどうなっていくのか、とたんに雲行きがあやしくなってくる。そういう、「対談」ならではのややこしい観点がえられたのだから、この本は「独演会」に終わっているとはいえない。