大学難易ランクが40(代ゼミ,2009)の大学で10年以上にわたり就職活動を支援してきた経済思想史・日本経済論の教授が書いた、就職活動の指南書です。学生でも読める本ですが、私はまず保護者の方に、そして教員の方にお勧めします。
本書の特徴は、「わかりました」と口ではいっても行動が伴わないような、じつは就職戦線で多数派を占める学生のために書かれていることです。このような本は珍しい。多くの類書は、(客観的に見て)高い能力とやる気のある学生自身が読んで参考とし、自己研鑽に努める際に役立つように書かれているのです。
著者が繰り返し説明するように、偏差値40から良い会社に入るためには、保護者や教員の支援が必要です。本書において「良い会社」とは、多くの学生が希望する「安定雇用」「常識的な労働時間」といった条件を満たす企業のことです。現実には、希望に反して離職率の高い企業などの採用面接を受け、1社から内定を得て就職活動を終えてしまう学生が多い。ここには心理の罠があり、独力での脱却は困難なのです。
序章 「記録」から始める就職活動
第1章 現代の学生の就職活動の実態
第2章 失敗しない会社選びのコツ
第3章 内定獲得に必要な能力と戦術
第4章 就職活動の落とし穴
第5章 就活と不況を経済学で考える
終章 実際の就活事例
本書の構成は概ね上記の通り。企業が多くの就職希望者に求めるコミュニケーション能力の具体的内容をはじめ、現実的ですぐに役立つ助言が満載です。私は偏差値60の大学から「良い会社」に入りました。同期には偏差値40の大学の出身者が多く、みな私より優秀です。本書を有効に活用すれば、読者の方もきっと「良い会社」から内定を得て、入社後も活躍できると思います。
本書の記述は私の実感に符合しますが、客観的なデータの裏付けがほとんど示されないのは残念です。今後の学術的な就活研究の進展を期待します。