私90年代初頭にコーランに興味をもって、手に入れたのがJVCワールドサウンズ・シリーズのこの一枚でした。今ではワールドミュージックブームやディープ・フォレストなどミクスチャーものでサンプリングされまくったお陰で、色々な種類の「コーラン」がリリースされているようですが、当時国内で手に入るのはこのCDくらいのものでした。9.11同時多発テロ以来、イスラム圏のものはどうもキナ臭いですが、宗教音楽はあくまで神聖なものです。マホメットもまたブッダやナザレの若者イエスと同じく「神」の啓示を預かった預言者なのであり、コーランはイスラムにおける聖書を意味します。イスラム圏は紛争の絶えない地域ですが、不毛な宗教戦争を起こし、聖戦を叫びテロで世界に挑戦するのは人間達の傲慢と言うものでしょう。信仰そのものはあくまで神聖なるものであることに変わりはありません。
脱線しましたが、私はイスラム教徒でも何でもありませんが、コーランは音楽的魅力があるのです。モスクの尖塔から町に礼拝の時刻を告げる「アザーン」のタハリール唱法も、実にエキゾチックで魅力的です。その証拠に、ワールドミュージック・ミクスチャーミュージックのアーチストに随分サンプリングされ、使い倒されました。西洋人が東洋にエキゾチズムを覚える様に、ちょうど西洋と東洋の交点に在る中近東の風俗や文化・音楽は我々日本人に取ってのエキゾチズムをくすぐります。本作では4名の名手によるトルコはイスタンブールのコーラン読誦が収められています。下手に伴奏などが無い分、その旋律の魅力と独特の唱法の醍醐味が味わえます。こういう日本で言えば「声明」や「お経」にあたる朗誦は、下手なヒーリングものなどよか余程安らぎます。私はいわゆるヒーリングミュージックの、いかにもワザとらしいあざとさや、安っぽいシンセの音造りが鼻に付き聴いてられない方なので、こうした本物の方がリラックスできます。抹香臭いとか縁起が悪いとか妙な先入観を捨て純真にお経などに耳を傾けてみると、ファジーな旋律や節回しに妙な感覚にとらわれてしまう。やはり経やコーラン、「ヌスラット・ファテ・アリ・ハーン」に代表されるカッワーリーなどは、伊達や酔狂では無い不思議な力を秘めているものです。エセヒーリングミュージックに飽き飽きした方にはお勧めいたします。「声明」や「お経」「御詠歌」「カッワーリー」なんかも試してみてね。