ひとことで言うととても良くできたドキュメント映画です。そこには二つの意義があ
ります。一つは日本近代建築史を知ることができるということです。建築に興味のあ
る人ならば大学のカルチャーセンターで1学期分を受講できたお得感をもてるでしょ
う。また日本復興近代史に興味ある人にとっても大学の講義を凝縮して聴講できた充
実感がもてます。二つめはF.L.ライトの人生のドラマとしてもエンジョイできる映画
作品だということです。
1905年にF.L.ライトが始めての海外旅行で日本に来た時から現在までをF.L.ライト
と日本の関わりを通して展開しています。学校の授業では聞けない波瀾万丈なライト
の人生と同時に多くの証人のコメントがテンポ良く流れ、長い筈の映画があっという
まに終わってしまいます。
なぜかF.L.ライトのことを「ライトさん」と呼ぶ御婦人が多くいます。ル・コル
ビジェを「コルビジェさん」とか、ましてやミース・ファンデル・ローエを「ミース
さん」と呼ぶ人には会ったことがありません、「ライトさん」という特別な愛着ある
呼び名が示すことはF.L.ライトが公人にもかかわらず、成長期の日本の社会の中に深
く浸透していたという事実の現れだったのではないかと思えてなりません。この映画
「偉大なるオブセッションフランク・ロイド・.ライト建築と日本」はそういった個人
ライトと彼が関わった当時の文化、日本の社会背景までもあぶり出していると言えます。
個人的には日本における建築デザインの種を蒔いたジョサイヤ・コンドル/片山東
熊からアントニー・レーモンド/下元連までこんがらがった糸が一つに繋がってすっき
りした爽快感が得られたことは悦びでした。
付け加えるとすればタイトルのある「偉大なるオブセッション」の「オブセッショ
ン」の言葉が難解で題名としてのポピュラリティーを欠き映画購入の勇気をそがないか
心配なところでしたが、観終えて心配は吹き飛び、実際の映画の内容は観やすく満足で
きる貴重でお勧めの文化映画と自信をもって言えると思います。