まず非常に印象的だったのは、あのモジャモジャ頭の容姿からは想像すら出来ないほど固い文章をかかれる方だなということです。
エッセイなので普通もっと肩の力抜けた文章になる傾向にあるのでは、と思うのですが著者の専門的な本はどこまで固いのだろうと興味すら湧いてきます。
内容は歴史的偉人の脳からみる著者の考察を、シュテファン・ツヴァイクの名著「人類の星時間」になぞらえながら披露してくれるというもので非常に興味深かったです。
「岩のドーム聖地エルサレム」の段で、
「表現しようとすればいくらでも出来るのをあえてしない。真実は仮想の中にだけある」という箇所にはなるほどと大きく頷きました。
「受難と情熱キリスト」の段では
「現代において多言語に通じていることより多文化に通じていることのほうが大切」と説き
翻訳を通じて結び付けられた言語の間の「ズレ」が異文化に入り込んでいくきっかけになっていく、というのは面白い見方だなと思いました。
パッションは情熱という意味と同時に、受難という意味もあります。
元々パッスス「苦しみを受ける」が転じて情熱に変わっていく過程を想像するだけで確かに楽しい。
そして思わず唸ってしまった記述は
「自分の内側に惹起する様々をそのまま表現するほどうかつなことはない。私達は諸事情に隠密になってこそ表現者としての生を全うできるのだ」。
これは凄い端的で見事な文ですね。惚れ惚れしました。
各々が新しい感受性を発見できうる素敵な本だと思います。