私は、以前、今現在絶版となっている原田佳彦訳『倫理と無限』(ポストモダン叢書6/朝日出版社)について、以下のように評した。
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おそらく版権の関係であろうが、現在この本は入手困難となっている。ラジオ放送での対談を掲載したこの『倫理と無限』こそ、レヴィナス思想の最良の入門書であるにもかかわらず、である。岩田康夫氏は、(岩波ジュニア新書シリーズの中でも名著の誉れ高い)『ヨーロッパ思想入門』の巻末でこの『倫理と無限』を参考文献として挙げており、また最近氏が上梓した『よく生きる』(ちくま新書)では「難解なレヴィナス哲学へのもっともわかりやすい入り口」と紹介している。この本で取り上げられているトピックは以下の通り。
1章 『聖書』と哲学
2章 ハイデガー
3章 「がある(イリヤ)」ということ
4章 存在の孤独
5章 愛と親子関係
6章 秘密と自由
7章 顔貌
8章 他人に対する責任
9章 証言の栄光
10章 哲学の厳しさと宗教の慰め
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このたび、新しいヴァージョンが上木され、しかも廉価(1050円!!)で求めることができ、私はいたく感動いたし、そして寿(ことほ)いだ。
訳に関して言えば、旧ヴァージョン・原田訳と較べて、いくぶん読みやすく、熟(こな)れた訳になっていた。またレヴィナスの術語(ターミノロジー)の訳がスタンダードなものになっていたのも、大いに評価するべき点だと思う。例えば「visage」は「顔貌」から単に「顔」に、そして一番訳出に困る「desir」という術語は「願望」から「欲望」(岩田靖夫は「あこがれ」と訳したがあれはやりすぎじゃ)になっていた。
また原田版と違う点として、【原注】に加えて、訳者西山雄二による実に詳細な【訳注】が附されている。この【訳注】がまことに秀逸である。この【訳注】(そして訳者「あとがき」)じしんがひとつの「作品」として完成されているように私には思われる。それを読むだけで、かなり理解の度合いが違ってくるだろうし、また勉強にもなると思う。
ひとつケチをつけるなら、術語、著作名の後に、もう少したくさんフランス語の原語を〔 〕付きで挿入して頂きたかった。それでなければルビをもっと振って頂きたかった。その点では、原田版の方が徹底しており、親切であったかもしれない。
レヴィナスを読もうとするなら、何よりもまず、この『倫理と無限』から始めるのがベストであろう。本は薄いが中身は濃い。字も大きい。トリヴィアルなことだが、紙の質も、気のせいだろうが、幾分昔より良くなっているような気がする。表紙のデザインも旧版よりはるかにお洒落である(というより、旧版の表紙のデザインがダサすぎた)。フランス語の元本『ETIQUE ET INFINI』も、対談ということもあって、平易で読みやすく、フランス語の修練(エチュード)にも適しているといえる。
すごくお奨め。