倫理を哲学する本。架空の大学教授の講義とその講義を受けたらしい学生二人プラス猫一匹の対話という形式で話は進んでいく。講義の方は無難な倫理学史といった感じだが、それに批判的な対話部分が続くことにより面白さが増していると思う。登場する学生のキャラクターも妙に偽悪的だったり倫理に関心がなかったりと普通だったら劣等生のような設定。しかも彼らが最後まで丸め込まれたり改心することもない。よって本書は倫理学をすんなり受け入れられない人が、受け入れられないことをそのまま肯定できるような内容になっている。倫理学に胡散臭さを感じている人は、その胡散臭さの元に何があるのかを発見できるだろう。それでも本書を一般教養倫理学の教科書にしている先生もいらっしゃるそうなので、「教科書」としても問題はないようである。
猫アインジヒトが妙にかわいらしいこと、後半のドラマチックな展開、肝心なところを「愛」の一言で済ませてしまうあたりには賛否両論があるかもしれないが、読書案内などきちんとフォローもされており、初学者は一読して損はないだろうと思われる。