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倫理という力 (講談社現代新書)
 
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倫理という力 (講談社現代新書) [新書]

前田 英樹
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容説明

「してはいけないこと」があるのはなぜ? 信じられないような犯罪が横行する今こそ、倫理を根本から考え直そう。殺人、売春、あるいは授業中に立ち歩くことなど、なぜいけないのか、処方箋はあるのか。

内容(「BOOK」データベースより)

なぜ人を殺してはいけないのかわからない子供があちこちにいる今、真に大切なことは何か。人間が本来持っている「倫理の原液」をとり戻すための根源的な提案。

登録情報

  • 新書: 192ページ
  • 出版社: 講談社 (2001/3/19)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4061495445
  • ISBN-13: 978-4061495449
  • 発売日: 2001/3/19
  • 商品の寸法: 17 x 10.8 x 1.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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19 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:新書
ひと昔まえに,あるテレビ番組で,茶髪顔黒の少女たちが,親方について,さまざまな職業に挑戦するというコーナーがあった。風呂屋,内装工事,パン職人・・・・・・。彼女たちはぶつくさ言いながらも,きっと最後にはうれしそうで,いい顔して微笑んでいた。多分,生まれてはじめて,ほんとうの教育に,また道徳に触れたのではないかと思う。

本書の著者は,道徳は人格から人格へと,言外に伝わっていくものだという。だから道徳教育の前提は,道徳的な一人格の存在である。不道徳な大人が何を言っても無駄なのである。ないものは伝わりようがない。

道徳は,社会システムの必要や功利的な計算から生まれるものではない。もっと根は深く,存在そのもの,すべての存在物の一なる根源と触れ合うところから生じる。人によってはそれを神というだろう。著者は「倫理の原液」という呼び方をする。呼び名は何でもよい。そうした根源に触れて,みずからがあからさまに照らし出され,自我が打たれる。こうした体験を基点として陶冶された人格こそが,道徳を伝える媒体となりうるのだ。

風呂屋であれ,トンカツ屋であれ,武道家であれ,一つの道に精進している人ならば,その過程で多かれ少なかれ自我というこだわりをこわされている。だからかれらは,そうと意識しないままに道徳の媒体となっている。人格から人格へと,打ち砕かれた人,道に殉じる人を媒体にして伝わっていく,著者の考える道徳は,愛や信仰に似ている。

道徳問題や教育問題について考え,みずからの人格を陶冶したいと思う人には,一読をおすすめできる好著だと思う。

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12 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By picander トップ500レビュアー
形式:新書
著者の叙述のスタイルが好きだ。
リズムがあって平易で、でも単調にならず、鑿で木を削って彫刻していくように切り口は鋭利なのだが結果そこから表れるものは仏像の笑みのように優しい。
そんな文章は好みがわかれるだろうが、気に入っている。
大工が一本ずつ鉋で削り木を組んでいくように、左官が少しずつ混ぜた土を重ねていくように、セザンヌが一人の男を描くために一色ずつ重ねていくように、自然にたいして精神を開き、真摯に対峙することが、即ち倫理なのだ。
著者の筆は丁寧に倫理の産まれる始原へ、旅を続ける。
倫理学の本の多くは、究極的な状況を想定して「さああなたならどうする?」とケーススタディを強いる。「重度の障害をもった子を、あなたは産みますか?」「国家は死刑をする権利がありますか?」、、、
本書はそんな問いかけとは無縁の、倫理の本である。
倫理はあなたの真横にある。あなたが魚を三枚におろすとき、あなたが木に釘を打とうとしたとき、すでに倫理は芽生え、あなたは十分に倫理的である。はるかかなたのケーススタディではなく、倫理は生きることのなかに、縦横にちらばっている。
生きるための倫理の本。
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23 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By "imura"
形式:新書
少し前に『世界を肯定する哲学』という題名の本を読んで生きる気力をなくしていたのだが、この本のおかげですっかり回復することができた。この本にこそ先のタイトルを掲げてみたい気がする。

 「倫理の原液」を取り戻すにはどうすべきか、「自然」や「物」のもつ知恵から直接学ぶにはどうしたらいいのか、というのが著者の問いである。このような著者の問い方は、つまらない理屈に慣らされた者には不完全な論理にしか映らないかもしれない。たとえば著者はこう言う。「私たちの社会で、殺人を禁じているものは、法律でも国家でも、また社会そのものでさえない。この社会を、そうしたさまざまな禁止によって生んでいる何かである」。このような叡智の存在に感覚的に手応えを感じない者には、この本は何も伝えらないおそれがある。あるいはまた、集団に与する本能と個体に与する知性の間の矛盾から道徳は生まれたとし、結論として「人は、ただ端的に道徳を守りたいのである」という地点の存在を著者は指し示す。飽食に慣れた本能や、肥大した知性が邪魔をしてしまう者には、これはつまらない独り言にしか聞こえないのではないだろうか。

 しかし言うまでもなく、「なぜ人を殺してはいけないのか?」などと理屈を振り回す子供たちと、それに対して予定調和のような理屈を提示する大人たちの間には、何も起こらない。そんな八方ふさがりの地点から、見晴しのいい高い場所に登るための道をいくつも用意した著者は、まさしく「世界を肯定」する努力に満ちている。「理屈」が優先する時代の誘惑に負けて「欲望の自動機械」に成り下がる前に、著者の崇高な態度に「感化」されたいと感じたのは私だけではないだろう。

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