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8 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
もうひとりの漱石,
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レビュー対象商品: 倫敦塔・幻影(まぼろし)の盾 他5篇 (岩波文庫) (文庫)
『倫敦塔』はエッセイ・旅行記の体裁をとっていながら、現実と過去の境を漱石がふらふらと行き来してるような夢想的な作品。20世紀=現実のロンドン塔にいながら、漱石が立ち会うのは死者の過去の世界。その世界が薄っぺらな20世紀の世界よりもはるかに密度の濃いものとして描かれています。漱石にとっては過去の非現実的な世界の方が圧倒的な力を持っているのです。『幻の盾』と『カイロ行』は英文学をベースにした古典訳という感じで、『一夜』はストーリーらしきストーリーがわかりずらい非常に幻想的、というより幻覚的なお話ですので、読みにくさを感じるかもしれません。 『ことのそら音』は登場人物の落語のようなセリフ回しとテンポ感から、一般に知られている漱石の趣に一番近いのではないかと思います。それでも主人公は日常でふと「死」という非日常の世界のあらわれに慄き、そのひずみに囚われてしまいます。 この本が出版された当初の題名は『漾虚集(ようきょしゅう)』だったそうです。まさに夢、幻、前世といったものをキーワードにして、現在と過去、現実と夢、日常と非日常の間を漂いながら、そこに潜む実体のないものを描いています。一般に知られている「夏目漱石」とはまた違ったトーンを持つ、もうひとりの漱石、私はけっこう好きです。
12 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
漱石初期の小品集。趣向を凝らしてあるがそれぞれ評価が分かれるのでは。,
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レビュー対象商品: 倫敦塔・幻影(まぼろし)の盾 他5篇 (岩波文庫) (文庫)
明治38年。漱石が「ホトトギス」に「吾輩は猫である」を連載していた頃の小品7作が、まとめて載せられている。「倫敦塔」とはロンドンのテムズ川沿にある「Tower(タワー=塔)」と呼ばれる古い城のこと。ウィリアム一世が1090年に建てた城塞だが、後に政治犯を幽閉する牢獄として使用された。現在は博物館として拷問の道具や中世の武具、英国王家の宝石類を展示しており、城の内部を見学できる。漱石が官費留学生として英国に滞在中に、このロンドン塔を訪れた。その時の体験を基にして、リチャード二世やヘンリー六世の昔に空想をはせる形式で書かれたのが、この作品。テーマとしては面白いが、ちょっと物足りない。星2つ。 一緒に収められている他の6小品のうち「幻の楯」は無理をして中世騎!士物語を書いており、これは駄作。星1つ。「琴のそら音」は、ほのぼのとした心温まるストーリーが良い。星3つ。「一夜」は、散文詩的な不思議な作品。妙な魅力がある。星3つ。 最後の「趣味の遺伝」は、日露戦争で戦死した若者とその若者に心を寄せた女性についての話。恋愛に関する好みの遺伝といったユニークな観点からまとめてあり着想が面白い。読後感も良く星4つ。 以上を総合評価すると本小品集全体としては星3つ。
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