企業の人員削減を支援する会社に勤務する村上真介シリーズ(?)の第2作だが最高だった。前作も面白かったが、本書はそれを更に上回る面白さで、しかも感動作だ。
その理由の一つはやはり舞台設定だ。村上真介の仕事はリストラ対象となる人物と面接して自主退職を勧めることなので、当然相手はリストラを迫られる企業の従業員だ。それなりの年数、会社に勤務した人に取って転職は人生の一大事だ。会社にとどまるにせよ、去るにせよ、大きな決断を迫られ、その中でいやおうなしに自分の会社人生を振り返り、家族、恋人のことを真剣に考えることになる。そして、そこに息詰まるようなドラマが生まれるのだ。
この点は前作も同様なわけだが、今回はリストラ対象となる登場人物が皆、魅力的な点が大きく異なる。前作ではどちらかというと主人公の真介と陽子の関係に焦点があたっていたが、今回は真介は脇役の方が多く、主人公は真面目でまともで一生懸命に生きている人たちで、彼らの悩みと決断が正面から描かれている。
どの作品も甲乙つけがたいが、その中でも白眉はやはり表題作の「借金取りの王子」だ。消費者金融という厳しい世界に似つかわしくない優男の宏明と元上司の美佐子の物語には心をうたれない人はいないのではないだろうか。
なお、真介と陽子の間の関係の深まりもその中で巧みに描かれている。最終話の「人にやさしく」だけは二人が主人公だが、ラストシーンでは実に爽やかな気分になった。読後の今はもっと続きが読みたい気持ちが半分と、この余韻に浸ったまま終わってほしいという気持ちが半分の複雑な気分だ。