ローレンス・ブロックの、アメリカにおけるミステリーの最高峰、「MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞」’92年度ベスト・ノヴェル(最優秀長編賞)受賞作。本書は無免許の探偵<マット・スカダー>シリーズの9作目に当たり、日本では’93年、「このミステリーがすごい!」海外編第6位にランクインしている。
あるケーブルTVのプロデューサー夫妻が強盗に襲われ、妻が殺された。彼女の兄が、夫の仕業に違いないので調べてくれ、とスカダーに依頼してきた。一方、半年前、AA(アルコール中毒者自主治療協会)の仲間から、マスクをした男女が少年をいたぶって殺すシーンが映っていたビデオを借りてしまったので観てくれと言われていた。件の妻殺しの調査中に、その時のビデオに出演していた男を偶然目撃したことから物語は始まる。
個人的には<スカダー>シリーズを読んだのは、『八百万の死にざま』に次いで2作目だが、本書では、相変わらずAAの集会に参加してはいるが、すっかり酒を断ち、内面の苦悩を、酒のかわりに恋人やその他の彼を取り巻く味のある登場人物たちによって映し出し吸収してもらっているスカダーを読み取ることができる。
今回スカダーは常人の道徳観念を持たない変質的な殺人鬼と対決するのだが、法によって裁くことのできない<罪>に、自らダークに<罰>を与えようとする。
本書は、異常な犯罪が多発するニューヨークという“汚れた”大都会に生きて、虚無感や深い陰影を抱えながらも、それでもタフに“仕事”をこなすスカダーの姿を描いた逸品である。