倒産法の教科書といえば、まず挙がるのが伊藤眞先生の『破産法・民事再生法』と『概説』だと思われる。ところが、前者は分厚くて通読するには難しい。また、ときどき伊藤独自説が、あたかも通説であるかのように記載されており、ミスリーディングでもある。他方で、後者は簡潔にまとまっているものの、いささか簡潔すぎる感が否めない。
この点、本書は、上記2冊の記載をベースにしつつも、確実に通説をおさえていくことができる良書である。細かすぎる事項については省略しつつ、重要事項については十分なページを割いている。判例についても適宜紹介されており、手元に百選がないときや、ざっと復習する際には重宝する。
本書に記載されている事項について、もっと深く調べたいと思ったときも、横にリファーがついているので調べやすい。予備校本特有の「記載内容に対する不安感」も、リファーの存在によってかなり克服されていると思われる。ちなみに、私が見た限りでは、百選の解説や調査官解説のみならず、『大コンメンタール破産法』や『条解破産法』、『条解民事再生法』の記述も適切に参照されているように思えた。
個人的には、新司法試験倒産法論文問題を収録しているとうれしいのだが、ページ数の都合だろうか。
本書は、良い意味で「『教科書』ではなく、『講義ノート』」である。本書を幹として、適宜百選や他の教科書を参照すれば、かなりの実力が付くのではないかと思う。まだ読んだことのない人は、ぜひ一度見てみることをおすすめする。特に、学部やロースクールで十分に倒産法の講義を受けていない人は、最初から教科書を読むのではなく、まずは本書を読むことを強く薦める。