■感想
本書は全体で280頁近くあるのですが、その6割(170頁強)が
企業の事例紹介(8社)です。
そして、肝心のダイバーシティ戦略については、「フレームワークの定義」
から「実践アプローチ」までが30頁と全体の1割のみです。
さらに、「ダイバーシティマネジメントの簡易チェックリスト」が
ついているのですが、1頁に10個の項目が書いてあるのみです。
"簡易"と断っているので仕方ない面はありますが、10項目をチェックした所で
アクションに結びつかないレベルの記載内容である点が残念です。
紙上では仕方無いとはいえ、それでも若干、一般論すぎる面が気になりました。
本書のタイトルは、「個を活かすダイバーシティ戦略」なのですが、
「ダイバーシティ戦略を策定、実践している企業群の紹介」という方が、
内容には即しているように感じました。
帯には「わが社のダイバーシティ(多様性)を探せ!」と書いてあるので、
充実した事例の方が売りなのかもしれません。
タイトルに「戦略」という言葉を用いたことが、読者に誤解を与える上、
敢えて「戦略」という冠を被せたのかしれませんが、全体を通じても
本書においては、「戦略」の定義が曖昧な点が気がかりでした。
フレームワークも紹介されていますが、従来のチェンジ・マネジメントと
差異は無く、本書でも『両者は相違ないように思われるが、異なるものである』
として下記説明がなされていますが、個人的には納得感が少し低いものでした。
「ダイバーシティ・チェンジ・マネジメントとは、カオスの状態を
意図的に作り出しながら、組織全体としてそれを調和・発展させていく、
本当の意味での「マネジメント」にほかならないのだ。」(本文抜粋)
他社の事例自体は、各社細かく調査されており、また経営陣のインタビュー
もあるので、他社の取組み事例として参考になる部分はあると思います。
これら事例を読みながら、自社の状況を分析してみたり、提供されている
フレームワークや視点を意識しながら整理してみることで、自社に即した
もしくは自身なりの気付きを得られるかもしれません。
■構成
本書の構成は下記のようになっています。
・ダイバーシティを推進している企業事例を紹介
−8社の事例を紹介(事例と経営層へのインタビューで構成)
・ダイバーシティ問題の実態を説明
−ダイバーシティが注目される背景を解説
−ダイバーシティ問題の構造と論点を解説
・ダイバーシティマネジメントの進め方を説明
−属性面の2点の多様性の向上策の視点を解説
−ダイバーシティ・チェンジ・マネジメントのフレームワークを解説
−ダイバーシティ・チェンジ・マネジメントの実践アプローチを解説
・ダイバーシティの効用を説明
−リーダー育成の観点から効用を解説
■コメント
プロローグに書かれていた下記文章は、本質を突いていると思いました。
自社にとってのダイバーシティは何かという定義においては、
ダイバーシティを通じて自社のパフォーマンスをいかに向上させるかという
戦略的な視点が不可欠であり、多様性を活かして何につなげていくかという
視点が明確に打ち出されている必要がある(本文抜粋・一部加工)