前半は文句無く面白い。
「20代男子」という生き物のリアルな生態が圧倒的に面白く、
俺俺詐欺をした相手の母親に絡めとられて行く辺りは”自分”と
いう物の曖昧さに怖いような笑ってしまうような、その感じが絶妙。
また量販店での、誰かを生け贄にしてバランスを保つ人間関係は、
20代に限らず多くの人が理解できる息苦しさだろう。
しかし心地よい「俺山」が崩壊し「俺」が増殖してからの描写は
現代社会の批評として読めるとしても、小説としては破綻している
印象を拭えない。
そもそもいつの時代だって、社会的には大半の人が入れ替え可能な存在で、
戦争中などはその最たるモノだろう。ただ家族や友人以外には。
その家族や友人関係も変質している上に、派遣等で使い捨て感も強いこの時代。
だからこういう話が高く評価されるのはすごくよく分かる。
だからこそ、小説の形でもっと「読ませて」欲しかった。(まあ言うのは簡単ですが)
ラストも「青年の主張」のように言いたいことを急ぎすぎた感があり、惜しい!
石井徹也氏のカバー絵が世界観がぴったり合っていて印象的。