ゴミ同然のガラクタが押し込まれた実家の箪笥や押入れ、腐りかけた食材で溢れる冷蔵庫、日々減じていくリハビリに対する意欲・・・読者の私も母の身の回りの世話の中で、理解に苦しみ、時に母に怒りをぶつけ、そして一向に改善しない現実。健常に生活をしている現役世代にとっては常識的なことが、できない。老いて自分の身の回りのことさえままならなくなった母親の取る行動がわからないでいた。理解の糸口がなく、その現実に接したときに平常心をたもつことができなくなる。
私はこの本を読んで、母の現状に対する不満が急速にしぼんでいく自分に気づいた。老いるということ、わけがわからない行動や習性についての理解のヒント、親の介護とは社会生活の中で自分を見つめなおす行為であること、などなど。この本を読んで、苦しい、負担である、という気持ちからだいぶ解放された気持ちになれた。
自分の目の前に立ちふさがる親の介護により社会のスピードから取り残される気持ちになりがちだが、実は目の前の課題に立ち向かい受け止めることがなにより自分の人生にとって大事であることに気づく。
親の介護で苦悩しているのは私だけではないのだ。理解できない現象は老いたものにとって自然なことなのだ。そして介護に取り組むことは意味のあることなのだ、という爽やかな気持ちになることができた。
この1冊に感謝したい。