烏賀陽弘道、西岡研介『俺たち訴えられました!---SLAPP裁判との闘い』は恫喝訴訟(SLAPP: Strategic Lawsuit Against Public Participation)をテーマとした書籍である。恫喝訴訟とは資金力のある大企業や団体が自らに都合の悪い批判意見や反対運動を封殺するために起こす訴訟で、高額の賠償金が請求されることが多い。嫌がらせ訴訟とも呼ばれる。恫喝訴訟の対象は言論界だけでなくマンション建設反対運動に参加する住民など一般にも広がっている。不都合な意見の封殺という点では民事の恫喝訴訟だけでなく、警察を使った手口もある。
本書は恫喝訴訟の被告となったジャーナリストたちが、SLAPP裁判の実態や名誉毀損訴訟の問題点を検証する。著者の烏賀陽氏は、事実誤認に基づく名誉毀損行為があったとして、5000万円もの損害賠償ならびに謝罪の請求を求めた訴訟が、烏賀陽氏側から恫喝訴訟と批判された。この訴訟はオリコンが請求を放棄することで決着した。
恫喝訴訟は訴えられる側にとって大きな脅威である。提訴者の目的は相手を疲弊させ、言論活動を萎縮させることである。そのため、恫喝訴訟を起こされて、最終的に勝訴(請求棄却)したとしても、裁判に労力を奪われたことにより、元々の言論による批判や反対運動が疎かになったとしたならば、恫喝訴訟の提訴者の目論見は成功したことになる。
従って恫喝訴訟での請求が棄却されて全面勝訴したとしても素直に喜べない。恫喝訴訟の存在自体が不当であり、応訴に費やされる時間と労力は本来不必要なものでものである。勝訴に至るまでの時間と労力に思いを馳せれば、暗澹たる気持ちになったとしても無理はない。それ故に本書のように恫喝訴訟を契機として問題意識を深めることは重要である。
(林田力)